Domybest62

side:

なんでもない顔をしながら歩くけど、心の中はドキドキしてる。

もしもし見られていたら。

翔ちゃんに迷惑がかかる。

それだけは嫌だ。

でも、滝沢さんはずーっと自分の話だけしていて、俺はそれに相槌をするだけ。

気づかれてなかったんだ良かった。

特に突っ込まれた話をされることも無いまま正門近くまで来た。

生徒会の人たちが挨拶している中に翔ちゃんがいた。

そっか、今日は門に立つ日だったんだ。

だから朝も早起きしてたんだな。

そんなことを考えながら歩いていて、ふと気づいた。

これってマズいよね?

滝沢さんと一緒だってことに気づいた俺。

翔ちゃんはまだ俺に気づいてないみたい。

今のうちに先に走っていこうと滝沢さんに声を掛けた。

先輩、俺ちょっと先に行きますね。

走り出そうとしたら強く腕を引かれた。

その反動で滝沢さんの腕の中に倒れてしまった。

あっす、すいませんっ

その時だった。

耳元で小声で聞こえた嫌な言葉。

どうして櫻井と一緒に来たの?

びっくりして滝沢さんを突き飛ばした。

目が合うと少し笑ってこの人、怖い。

バレてた見られてたんだ。

どうしよう、翔ちゃんに迷惑が。

一緒に車で来るなんて、どういう関係なんだろうな。担任だよな?櫻井は。

言葉が出てこなくてその場から動けなかった。

追い越していく周りの生徒達からもジロジロ見られてる。

そのうち嫌な声まで聞こえてきた。

滝沢っ、朝から相葉とイチャイチャすんなよ。

とうとう告ったらしいな、良かったじゃん。

早速、今日は一緒に登校か?

滝沢さん人気者だからな。

こういう噂とか、冷やかしとかあるってこと考えてなかった。

でも今は、俺なんかのことはどうでもいい。

翔ちゃんが翔ちゃんのことが心配だよ。

相葉、行こうぜ。

滝沢さんに手を引かれて歩きだそうとしたけど足が動かない。

手に汗はかくし、背中も変な汗で気持ち悪い。

その時

相葉、顔色悪いな大丈夫か?

愛しい人の声が聞こえた。

でもダメだよ、翔ちゃん。

今このタイミングはマズいよ。

だ、大丈夫です。一人で歩けます。

滝沢さんの手も、翔ちゃんの手も振り払って前に歩き出した。

でも翔ちゃんは譲らなかった。

ダメだろ、そんなに汗もかいてんのに。

取り敢えず担いで行くから我慢しろな。

滝沢、悪いけど連れてくな。

ヒョイっと背中に担がれて翔ちゃんが歩き出した。

門をくぐった時に背中から一言ごめんって伝えたらお尻にある手がポンポンって動いた。

翔ちゃん、本当にごめん。

そのまま保健室まで連れていかれた。

保健の先生はまだ来ていなくて、ベッドに座らされた。

顔をのぞき込まれて翔ちゃんと目が合う。

何か言われたか?

ドキッとした。

まるで全部わかってるような顔をしてるから。

な、何が?

見られてたんだろ、滝沢に。

それで何か言ってきたんだろ?

翔ちゃんの真っ直ぐな目に頷いた。

ごめん、俺が泊まるって言ったから。

翔ちゃんに迷惑かけらんない。

だからだから

言葉と同時に抱きしめられた。

今朝も感じた感触。

翔ちゃんの背中の筋肉と翔ちゃんの鼓動。

あったかい温もり。

離れたくない気持ちが溢れてきた。

バァカほんとにお前は。

誰が迷惑って思うんだよ。

お前がそうやって迷って悩んでする方がよっぽど迷惑だわ。

滝沢の事は俺が何とかするから。

お前は俺だけをみていればいいんだよ。

わかったか。

こんな時、翔ちゃんは大人なんだって実感する。

頼りになるし、怖くないって思える。

翔ちゃん、本当にごめんね。

そういう時はごめんじゃないだろ?

ありがと。

翔ちゃんの腕の中で呟いた。